【執筆者】マネースミス 吉野 裕一

令和3年度の税制改正において、退職所得控除について改正が行われ令和4年度から施工されています。
これまでの退職金については大きな税制優遇がありましたが、令和3年度の改正ではどのようになったのでしょうか。

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令和3年度までの退職所得の課税計算

退職金の課税に関しては、税制優遇があります。勤続年数が長くなれば退職所得控除という支給された退職金から課税計算される際に控除される額が多くなるようになっています。
この退職所得控除は20年までは、40万円×勤続年数が退職金から控除されます。20年以上の勤続年数があれば、21年目からは1年ごとに70万円が控除されることになります。
例えば、勤続年数が15年の人で退職金が1000万円の場合は、
退職所得控除:40万円×15年=600万円
1000万円-600万円=400万円となります。
これだけでも大きな優遇ですが、退職金に関してはさらに先ほどの額を2分の1にした金額に応じた税率をかけて所得税が計算されます。
上記の例では400万円を2分の1にした200万円に税率10%をかけ9万7,500円を控除した10万2,500円。
現在は復興特別所得税が2.1%課税されていますから、10万2,500×102.1%=10万4,652円が所得税の額になります。

退職金は長年働いた報償という見方

退職金の優遇がこれだけ大きな理由は、給与の後払いや長年働いてきた報償という意味合いが強くなっているからです。
最近では、長年勤めた会社を退職して、再就職をするということも珍しくないと思います。
法人役員等の退職金については勤続年数5年以下については、長年働いてきた報償という意味合いに該当しないということから、平成24年度の税制改正で2分の1にしないことが決まっていました。
令和3年度の税制改正では、法人役員等以外の退職金に対して一定額以上の部分については、2分の1にしないということが決まっています。この一定額は300万円と決まりました。
仮に5年間働いた時の退職所得控除額は40万円×5年で200万円が控除されることになります。
300万円が退職金として支給されると200万円が控除され、2分の1の50万円に税率がかけられることになります。
しかし役員ではないものの関連会社などの再就職で一般の従業員よりも優遇されて再就職するというケースもあると思います。
平成24年度の法人役員等の退職金についての優遇が変更になったことで、あえて役員の役職につかず再就職しているというケースもあったのかもしれません。
そうすると勤続年数が5年以下であっても、多額な退職金が支払われることも考えられます。
例えば5年間勤めて500万円支払われた場合、以前の制度であれば、500万円‐退職所得控除200万円=300万円
300万円の2分の1の150万円に所定の税額の計算がされ、7万6,575円が退職金に係る所得税となります。
この度の改正では、300万円までの100万円が2分の1になりますが、300万円以上の部分の200万円はそのまま使われることになり、15万5,702円と以前の額から倍以上になりました。

まとめ

令和3年度の税制改正で、退職所得に関する税制優遇が縮小されました。勤続年数が5年以下の法人役員等は退職所得控除を行った後の2分の1は適用されていませんでしたが、これからは法人役員以外の従業員であっても5年以下の場合、300万円以上の部分については2分の1が適用されなくなりました。
しかし、やはり退職所得に関する税制優遇は大きなものですので、退職金は老後資金のために計画的に使っていきましょう。