【執筆者】マネースミス 吉野 裕一

これまでも相続対策として生前贈与を行う人はいました。生命保険を使う方法もあれば、暦年贈与という年間110万円は基礎控除となり、非課税となることで、計画的に贈与する方法もありました。2023年度の税制改正により2024年1月1日からこの相続時における暦年贈与のあり方も変更となりました。

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暦年贈与の相続財産への合算期間延長

2023年までは、基礎控除110万円までの贈与は非課税で受け取ることが可能でした。この基礎控除額は2024年からも変更はありません。
この基礎控除を活用した生前贈与は、よく話題に上る方法で、毎年、同じ時期に贈与を繰り返していると計画贈与(定期贈与)として捉えられ、贈与額全額に対して贈与税が課税される可能性があります。
毎年、贈与する方法は連年贈与と定期贈与として、同じように贈与をしても、税務署から違う捉え方をされる可能性があります。
出来れば連年贈与という毎年贈与は行うのですが、贈与の度に贈与契約書を作成するなど、計画的に贈与を行っているのではないという証を作っておく必要があります。
これまで、暦年贈与で贈与されたお金に関しては、相続税の相続財産に加算される時期がありました。これは相続が発生した日以前3年間に贈与された額となります。例えば2022年に被相続人が死亡し、過去5年間に毎年100万円ずつ、相続人に贈与を行っていた場合、300万円は相続財産に加算されました。
この期間が、今回の改正により、3年から7年間に延長されました。上記の例では、2023年までであれば、300万円が加算されましたが、2024年に相続が発生した場合には、3年分の300万円と4年前以前の200万円から100万円を控除した400万円が相続財産に加算されることになりました。

相続時精算課税制度を活用すれば非課税で贈与が可能に

生前贈与に関して、もうひとつ改正がありました。
相続時精算課税制度という、制度利用の意思を申告することによって、生前に贈与したものを、相続が発生したときに贈与時の価値で相続がされたとし、相続税が計算されるという制度でした。
しかし、この制度を選択すると、暦年贈与が利用できなくなり、110万円以下の贈与に関しても、贈与の度に申請することが必要となっていました。
こういった手間なことや不便なこともあり、相続時精算課税制度は利用しづらい制度となっていました。
今回の改正では、この制度に110万円以下の贈与に関しては申告不要で、非課税で贈与できることになりました。
この改正で、一般的な暦年贈与を行った場合は、贈与に対して7年間の贈与額が相続財産に加算されますが、相続時精算課税制度を選択すれば、累計2500万円までの贈与に対しては、贈与税は課税されず、さらに毎年110万円までの贈与は期間に関係なく相続財産に加算されないことになります。

まとめ

2023年度の税制改正は、その他にも改正がありますが、今回は相続に関する制度改正について注目しました。
暦年贈与による生前贈与は、よく行われる方法で、相談に来られた人も知っていることも多く、私から提案することもありました。
しかし、今回の7年間に延長となったことで、早期の生前贈与を促す目的や税収を増やす目的とも捉えられます。
また相続時精算課税制度では、2500万円の生前贈与に暦年贈与とは別で110万円の控除を行うことが可能になりました。
ただ内容は同じように見えますが、相続時精算課税制度を選択すると暦年贈与の基礎控除は利用できず、相続時精算課税制度内の110万円控除を利用することになります。
暦年贈与と相続時精算課税制度を110万円控除を同額にしているのに対して、筆者は少し違和感もあり、相続時精算課税制度では相続発生前7年までに贈与した額は非課税となるので、もう少し金額を下げても良かったのではないかと感じました。